皆さんは、ファスナーをじっくり眺めたことがあるでしょうか? YKK株式会社(以下:YKK)の社員であれば、日常業務のなかでやっていることでしょう。30年以上にわたって、同社のドイツ事業に勤めるセールス&マーケティングマネージャー、アンドレアス・ブランデンブルガー氏は、今回のインタビューの中で、はたから見るより多くの発見があると述べました。品質、イノベーション、そして私たちの日常生活におけるモノの仕組みに対して、新しい視点をもたらす日本の精神について、お話を伺いました。
――いきなりですが、社名の正しいドイツ語発音を教えてください。
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:当社は、ドイツにおける雇用を創出し、国内生産を行い、ドイツのニーズに応えるようにしており、ドイツ企業として認識してほしいという思いから「Ypsilon Kah Kah」というドイツ語発音を使うことが多いです。一方、他社と同様、グローバル展開が進むことによって、英語発音の「YKK」も徐々に浸透してきています。
昔からのお客様の中には、創業者吉田忠雄氏の名前をご存知の方もいて、今でも「Yoshida」と呼ばれることもあります。このように、長い間、お客様と良い関係を構築できたことを誇りに思います。
――YKKグループの組織構造について教えてください。
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:私はたいてい「何をしている会社ですか?」という質問に対して「ファスナーを作っています」と、あえて平凡な答えを返します。その後、クローゼットの中に並ぶズボンや上着の多くに、私たちのファスナーが付いていることに気付いて、ハッとする方が多いですね。特にアパレル分野では、世界市場の最先端を走っています。
ファスニング事業はドイツの中核事業であるものの、グローバル全体の売上でいえば約40%にあたります。もう片方は、ファサード、窓、ドア、前庭、コンサバトリーなど、主に建材を扱うAP(Architectural Products)事業となります。東京の当社ビルには、実際の製品に触れていただけるショールームもあります。
AP事業は、アジアや北米において豊富な実績を持っていますが、欧州では一般的にほとんど知られておらず、独立した営業部門もありません。日本や米国の超高層ビルの建築工法はきわめて標準化されている一方で、欧州には、窓を一つ一つオーダーメイドできるなどの特徴があります。それゆえ、市場参入のハードルは当然高くなるわけですが、2017年には、欧州の住宅建材市場の調査を行うR&Dセンターをドイツに開設しました。
これに対して、ドイツのメイン事業は長らく続いています。当社グループは、独自開発した製造機械を用いています。サプライヤーが機械を自社開発するケースはほとんど見られませんが、品質を左右する重要な要素となります。例えば、ジーンズに付いている金属製ファスナーの場合、切断時におけるバリの発生や鋭角化を防ぐよう、適正な隙間を設定することが必要不可欠です。単純に、品質管理の上で欠かせないため、機械を自社で製造しています。
――ファスナーは洋服の品質の良し悪しを決める重要なポイントですか?
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:私たちのブランドは、消費者の最優先事項ではありません。YKKのファスナーが付いているからといって、ズボンを購入するわけではないのです。そのため、消費者の目に付くことはほとんどありません。ファスナーというのは、引っかかってはじめて意識が向くものです。スムーズに機能していれば、消費者は気にする必要のない部分であり、それがあるべき姿なのです。高品質のファスナーは、使いやすいだけでなく、アパレルメーカーが加工を行う際にも問題を起こしません。
ファスナーの満たすべき要件は使用目的によって様々です。ファスナーは3つの製品カテゴリーに分けられます。1つ目は、樹脂製のコイルファスナー。布製ズボンや靴、テントなどでおなじみのファスナーで、作業着やマットレスにも付いています。次に、メタルファスナーは、パーカーやジーンズなどに使われています。私たちの最も代表的な製品であり、メディアも「ファスナーにはなぜYKKという表示があるのか?」というテーマをしばしば取り上げるほどです。3つ目は、子供服やスポーツウェアに使用される樹脂製のファスナー。基本的には、樹脂をエレメント(務歯)としてテープ部分に射出成形したもので、その特殊な形状を活かして、特定の分野における有利な特性や見栄えが良いという利点を持っています。
各カテゴリーには、それぞれ要求事項と品質基準があります。例えば、幅6ミリのコイルファスナーは、靴や作業着、あるいはリーフブロワーの袋などに使われています。つまり、用途別に要件が決まっているわけですが、残念ながら私たちは、ファスナーを製造する時点では、お客様の使用目的を知らない状態にあります。そのため、複数のシナリオを想定した製品開発を心掛けています。これは、お客様にとってのメリットであると同時に、市場ごとの技術的基準を気にすることなく製品をグローバル展開することを可能にします。当社の基準値は、場合によってはDIN(ドイツ工業)規格を大幅に上回ることもあり、余裕を持って、最高の品質を保証することができます。それどころか、現在、自社独自の品質基準をいくつも設けています。
” 製造工程における配慮、使用する素材、生産者や産業ユーザーがファスナーに要求する条件によって、品質基準の違いが生まれることもあります “
――その基準値はどのように決定されるのでしょうか?
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:実践的に用途を模倣します。まず、産業ユーザーと消費者の両方が、市場に出回る製品を把握できるよう、サイズが定義されています。2016年には、ファスナー製品を特定のカテゴリーに分類する新たな欧州規格が導入されました。カテゴリーに応じて、技術に対する要求が異なります。
例えば、上着の場合、箱と呼ばれるファスナーの四角い下止め部分が、安定性試験に合格する必要があります。子供服や子供用の寝袋では、丈夫な引手が絶対的条件です。例えば、子供が引手を引きちぎって飲み込んでしまうようなことがあれば、健康を害する可能性があり、製造物責任を問われます。他にも、引裂強度や下止強度なども重要な側面として挙げられます。
製造工程における配慮、使用する素材、生産者や産業ユーザーがファスナーに要求する条件によって、品質基準の違いが生まれることもあります。その内容は、使用頻度から天候や気温への耐性、汚れ防止や洗浄プロセスまで、多岐にわたります。
――高品質な製品を生み続ける秘訣を教えてください。
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:特に重要な役割を果たしているのは、私たちが自社開発する製造機械です。例えば、ワンピースの背中に縫い目が見えないファスナーが付いている場合、その長さはたいてい40cmから60cmほど。コイルをファスナーの長さに合わせてカットする製造過程が、丁寧に行われていなければ、小さな螺旋が残り着用時に背中を突いたり引っ掻いたりする原因になります。せっかくの美しいワンピースも、着心地が良くなければ台無しになってしまいます。しかし、この問題は、コイルの端っこを覆うように樹脂タイプの上止めを付けることで回避することができます。コイルの端っこが必ず上止めの中に隠れるためには高い基準値に加えて、ちょっとした微調整をすることができる非常に優れた機械が必要です。小さな違いが結果の大きな違いを生むように、一目見ただけでは分からなくても、着心地には大きく影響します。
――YKKのファスナーは、洋服以外にも使われていますか?
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:マットレス、テント、蚊帳をはじめとする多岐にわたるラインナップを取り揃えています。また、当社が開発する防水ファスナーは、ボートカバーやダイビングスーツにも使われています。防水性素材を用いた製品開発では、ファスナーが弱点にならないようにすることが大切です。
ドイツでは、旅行用スーツケースにも注力しており、幅広いソリューションを提供しています。さらには、自動車の内部用品や防護服に使用される、難燃性素材のファスナーおよびメタ系アラミド繊維のテープも開発しました。普段運転をしていても、車内にはヘッドレストやシートカバー、エアバッグカバーなど、実はファスナーが使われているところが何箇所も存在するということを知らない人もいるのではないでしょうか。
さらに広く見れば、他にもまだまだあります。当社の成長分野である面ファスナー、あるいはマジックテープは、おむつや公務員用の制服に使われています。また、テントの耐風索用のDリング、コードストッパー、スナップフックなどの特殊なプラスチックパーツも提供しています。
YKKの製品群には、金属製のファスナーも含まれています。ドイツにおいて、スナップファスナーやアイレットワッシャー、リベットバーなどを取り扱っている独立子会社YKK STOCKO FASTENERS GmbHは、ヴッパータールに所在しています。
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――ファスナー製品にイノベーションの余地はあるのでしょうか?それとも既存製品の改良開発がメインですか?
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:両方ですね。例えば、約10年前にサンプロテクション分野に参入したことは私たちにとって革命的な出来事でした。この分野では、ローラーブラインド、オーニング、ローラーシャッター用のファスナーを提供しています。国際シャッター・ブラインド・門扉見本市「R+T」は、今年は残念ながら中止となりましたが、3年前に初出展した際には、予想をはるかに超える来場者数となり大いに賑わいました。結局のところ、この用途におけるファスナーの要件は非常に厳しいものです。私たちは加工ツールに投資し、この分野で年率約20%の成長を遂げています。また、YKKグループとして15年前からISPOという国際スポーツ用品展示会にも積極的に参加しており、少し前には、ラミネート加工された上着に直接縫い付け可能なファスナーを展示しました。Gore社との共同開発によって生まれたこの商品は、布地のファスナーテープが省略できることが利点です。
また、数年前には、ユーロファイターのパイロット用耐Gスーツの開発に協力しました。パイロットはG(重力加速度)にさらされるため、9Gまで耐えられる特殊なスーツが必要です。このような膨大な荷重に耐えられるファスナーを開発しました。また、スーツが炎上してしまったときに、パイロットがパニックに陥り、焦りながらスーツを脱ごうとすることで、ファスナーの引手を引きちぎってしまうとスーツが全く脱げなくなってしまう危険性があります。したがって、500ニュートン(約50キロ)もの力がかかっても壊れない引手が必要となります。当初は投資目的でしたが、この類の衣料品は、今や私たちにとって重要な市場となっています。バイエルン州警察の新しい青色の制服の開発は、最近支援したプロジェクトの一つ。当初は、ズボンが破れるなどのトラブルもありましたが、ファスナーは見事に持ちこたえています。
――ドイツ支社の歴史について教えてください。
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:YKKドイツ支社は1967年に、欧州3番目の現地法人として設立されました。まず、欧州初の現地法人が1965年にオランダのスネーク市に、次に、英国支社として本社がロンドンに、そして生産拠点がランコーンに設立されました。その後私たちが続きます。
1967年から1971年にかけては、販売代理店と協力しながら製品を輸入していたため、空港へ容易にアクセスできることが立地の決め手となりました。また、顧客層はアパレル業界が中心だったため、フランクフルト、メンヒェングラートバッハ、ベルリン、ミュンヘン、ビーレフェルト、そしてシュトゥットガルト近郊に拠点を設けることになりました。1972年には、ドイツのワイマール・ヴェンクバッハにファスナーの生産拠点を開設し、事業はその後も継続して拡大していきました。
アパレル部門は、主に、テキスタイル、靴、革製品に焦点を当てて、80年代半ばまでは、市場浸透率25〜30%の柱事業でした。それゆえ、オッフェンバッハの近くに事務所を構えています。当時、オッフェンバッハやアシャッフェンブルグ周辺の地域では、アパレル産業が盛んでした。しかし、1980年代半ばになると、衣料の生産は東欧、トルコ、そして最終的には、アジアへとシフトしていき、今では、コスト面だけでなく環境要因からも中央アフリカに生産拠点を移転する傾向が強まっています。
――ドイツ事業において、この傾向による経済的な影響はありましたか?
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:産業構造が変化したにもかかわらず、ドイツ事業の落ち込みはありませんでした。解雇や思い切ったリストラではなく、長期的な再編を実施しました。それまでは、営業所や倉庫をお客様の生産拠点付近に置いていましたが、アパレル事業は、仕立屋ではなくトラックの配送スケジュールに左右されるようになっていきました。そのまま事業は継続していましたが、地域密着型および多店舗展開の必要性は弱まっていきました。それから徐々に、技術的なアプリケーションや新しい顧客層への投資を強化し、現在、ドイツ国内にはここマインハウゼンの本社とワイマール・ウェンクバッハの2つの生産拠点があります。全体で約250名の従業員がおり、そのうち2/3が生産技術部門、1/3がその他の部門で働いています。現在、幅広いラインナップの生産が可能で、販売する製品の大半をドイツで生産しています。
――顧客層に変化はありましたか?
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:アパレル部門は、1970年代、当社の潜在的な販売ポテンシャルの約80%を占めていました。2010年代に入るとその割合は35~40%に。残りはマットレスなどの機能製品ですが、非常にかさばる製品であり輸送が困難であることから、欧州近隣の地域で生産されています。スーパーマーケットやカーディーラーなどの制服も比較的最近注力するようになった分野の一つです。主に、リースモデルとして各企業に制服を貸し出すサプライヤーを対象としています。一方、Engelbert Strauss社のような世界的な企業も、ほとんどのスタイルにYKKファスナーを使用しています。
全体として、ピラミッド型の顧客基盤を構築してきました。下の層の “エコノミー “セグメントでは、市場浸透率と販売量が共に高く、中間の層のセグメントでは価格と販売数量のバランスが取れています。そして、上の層のプレミアムセグメントは高価格品少量生産というモデルです。例えば、Lidl社やAldi社などといったお客様の要求は、割引商品をお値打ち価格で提供することです。魅力的品質ではありますが、ピラミッドの下の層に分類されるのではないかと思います。C&A社やKarstadt Kaufhof社などは中間の層に位置し、Hugo Boss社やBogner社などは上の層に位置する傾向にあります。しかし、たった一つのセグメントに限定することは意味がありません。私たちは多様な製品群を活かして、一人一人のお客様とそのニーズに応えています。
――アパレル業界が抱える課題へのチャレンジについて教えてください。
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:サスティナビリティは、ファッション産業における重要課題です。数年前に、世界のファスナー年間販売本数が100億個を突破するブランドに発展しました。これは長さに換算すると、地球80周回分に相当します。素晴らしいことである一方、サスティナビリティの観点からみると大きな問題です。
例えば、Primark社など、製造後まもなく処分されてしまうケースも少なくないファストファッションの小売業を想像してみてください。ファッション産業において、ファスナーが占める廃棄物の割合は2番目に多いのです。まずは、ここから手を付けます。海洋プラスチックや包装廃棄物などのリサイクル原料を使った製品開発や、水を使用しないファスナーの染色方法をはじめとするカーボンニュートラルな生産技術などを通して、業界の持続可能性向上にできるだけ貢献していきたいと考えています。これらの取り組みは、ドイツではまだ十分に確立されていませんが、実施に向けた準備を進めています。
また、”その場限り”の製品ではなく、長く愛用いただけることも大切にしています。良質なジーンズは履けば履くほどに体に馴染むように、ファスナーも時間が経つにつれ繊細でスムーズな動きをするようになるはずです。
また、YKKや他社のファスナーが壊れてしまった場合は、ドラックストアなどにてYKKファスナーを購入することができます。ファスナーが壊れたからといって、まだ着られる服を捨ててしまう必要はありません。ドイツにおける売上の約10%はこの小売部門が占めています。
――日本本社とはどう連携していますか?グローバル戦略に基づく業務が中心なのか、それとも、独立した意思決定権を委任されているのか教えてください。
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:ボトムアップもあれば、トップダウンもあります。当社は世界70カ国に展開し、4万人以上の従業員を擁していますが、組織構造はローカル企業や地域ブロックごとに編成されています。ドイツはEMEA(欧州、中東、アフリカ)ブロックに属しています。私たちは、英国からモスクワ、スカンディナヴィア諸国から南アフリカまでの地域を担当していますが、当然市場それぞれ異なる特徴があります。フランス、英国、ドイツなど歴史のある西欧市場では、刷新や革新的な取り組みが数多く行われている一方で、トルコやルーマニアなどは、基本的にアパレル分野の成長市場であり生産が中心です。
つまり、グローバルなトレンドも全ての市場に当てはまるわけではないため、地域レベルで考え、行動することが大切です。ドイツ支社は独自に投資予算を与えられ、人員計画や販売戦略も委ねられており、お客様に対してももちろん私たちが責任を持って対応しています。各国の関連会社にはそれぞれの繁栄を目指した戦略が求められています。
日本本社からドイツやEMEAに対する指示は、主に品質や労働安全、各企業の組織構造、ブランディングやマーケティングのガイドラインなどに関する内容が中心です。サスティナビリティなどの重要なテーマも日本が主導しています。日本本社は、他の代表的な国内企業と共同で持続可能な製品開発をし、グローバルに必要な生産体制を構築しています。一方で、難燃性素材を使用した作業服のように、ローカルに開発されたイノベーションがグローバルに展開されることもあります。日独間においては緊密な意見交換が行われますが、各市場は得意分野に集中することもできます。
――日独間の交流は行われていますか?
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:私たちは、日本人駐在員の年ごとのローテーションモデルから大きな恩恵を受けています。日本から赴任してきたマネージャーは、ここドイツで、言語ではなく、緻密さへのこだわりや技術志向が強い性格などといったドイツの文化や仕事のやり方を学びます。そして、ここで得た知識を別の部署や統括する分野に共有します。また、日本や北米などの地域から社員を迎えることによって、私たちの職場にも新鮮な雰囲気が生まれます。このような流動性は、常に好影響をもたらし協力関係を促進します。
――コロナ禍以前の社内コミュニケーションの実態について教えてください。
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:日本には、富山県黒部市にある生産拠点に加え、東京に本社を構えています。コロナ禍以前、5つの地域ブロックから代表者が参加する年次会議が開催されていました。事態が落ち着いたら再び開催できることを願っています。功績を残した社員や市場担当者も招待され、新しいことを学んだり発表したりする機会が与えられます。
しかし、当社はEMEA地域を担当する組織であり、常に日本と直接関わりがあるわけではありません。マーケティング、特許、IT、コンプライアンスなどのグローバルな分野は、日本本社が実施体制を管理しています。この点に関して、組織の規模や構造は非常に貴重だと感じます。
――日々の業務の中で、YKKの日本らしさを感じることはありますか?
アンドレアス・ブランデンブルガー氏:日本のアイデンティティは、とりわけ経営理念から感じることができます。顧客や取引先、さらには社会に、利益を還元する「善の巡環」という思想です。創業者吉田忠雄氏によって掲げられたこの理念は、ドイツ支社においても今もなお重要な役割を果たしています。考え方はいたってシンプル。「他人の利益を図らずして自らの繁栄はない」ということです。これは、ビジネスとプライベートの両方において、協調性や全体像への視点を大切にする日本人の精神を如実に表しています。
実務では、品質や安全性へのこだわりも特徴的です。万が一、社内基準値を下回るファスナーを納品してしまった場合、製品回収のリコールを実施します。その際、私たちは自らお客様の倉庫を回り、不具合のある製品を探し出すこともあります。また、製品をわかりやすく説明し、すべての人々に安心して使ってもらえるよう細心の注意を払っています。この品質基準は、創業以来、私たちの信念でありこれからも変わることはありません。